TATSUYA ART COMPETITION 2020出品作品「eye-shine-」解説

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「eye-shine-」

 

今年、仕事をクビになった。
クビというよりは、上司に人格否定され、それで精神を病んで辞めたって感じだが、まぁ実質クビだ。
退職推奨受けたしね。

 

そんな訳で、私は仕事先にあった沢山の繋がりを一気に断たれた。
今は回復したけど、鬱症状が出ていた時は「世界と繋がっていない感覚」にしばしば襲われた。
「世界と繋がっていない感覚」になると、自己否定が始まる。
「私には価値がない」「私には生きる資格がない」「人のお役に立てない奴は生きてて意味がない」と自分を攻撃するのだ。
現実世界の人間関係が切れたとき、わたしは内にある繋がりを求めた。
今一度、自分にとっての作品づくりを見詰めてみた。

 

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私にとって絵は、誰かと繋がるためのものにもなっている気がした。
中学の頃は友達同士で絵を交換しあったり、絵を発表すれば感想をもらえて、人と繋がっていると思った。
私が絵を描いているからこそ、繋がれた出会いがたくさんあった。
時には海の向こうの人とも交流できた。
絵を通しての交流には国境が無いんだと感じた。

 

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やっぱり私は人と繋がるために絵を続けたいと改めて思う。
今まで応援してくれた方たちのためにも。
そしてなにより、自分自身のためにも。
自分の内にあるイマジナリーの存在を証明するため、彼女たちを絵に描いていくという約束のため。
これも、内に向かうわたしにとっての繋がりだ。

 

今回出品した「eye-shine-」は、2014年制作の「Shine」と、2013年制作の「eye」を組み合わせたセルフオマージュである。

 

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画像:「Shine」2014年 モデル:流羽

 

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画像:「eye」2013年 モデル:あん


モデルは「Shine」と同じ流羽。
彼女の魅力的な内斜視を前面に押し出したくて、瞳に金魚を映す「eye」の手法を取り入れた。
私の絵に登場する金魚は、感情の具現化の意味を持つ。
「Shine」に込められた感情は、「わたしだって輝きたい」
内に秘めた感情は、少女の身体の様々な箇所から金魚となって出てくる。
今回はオマージュ元の「Shine」と同じく、髪から金魚に変貌させた。


彼女の担当金魚であるコメットは、美しく長い尾を持つので、髪から変化するのがぴったりだと思った。
自分の感情が金魚となって体外に出てくる→それを見つめる=自分の気持ちを見詰める。
輝きたい欲求、繋がりたい欲求を見詰める、本作はそんな作品になった。

 

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つやと濡れている瞳は金魚を見つめると同時に、鑑賞者のことも見つめている。
何かを言いたそうに開かれた口元からは歯が覗く。
瑞々しさを意識した金魚の尾には血管を描きこみ、生きているリアルさを表現。
爽やかなブルーに、体温を感じさせる赤みをにじませ、画面に空気感を演出した。
髪の流れと金魚の配置により、画面に楕円形の構図を作り出した。

 

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「eye-shine-」坂ノ咲 由平 画
F4(333×242mm)
oil on canvas
2020年制作

モデル:流羽

 

 

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